【産経新聞】車載端末+ネット、自動運転…安全技術進歩に
損保業界がジレンマを抱えている 

載記事URL:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170108-00000518-san-bus_all

【記事原文】
自動車に積んだ機器で運転時の動きに関する情報などを日常的に分析する
「テレマティクス」や、自動ブレーキ、自動運転といった安全運転を支援する
技術が広がっている。
技術の進展によって、事故率が減少すれば、自動車保険の収支改善が進み、
契約者が支払う保険料の値下げにつながる可能性も期待される。
ただ、過度に事故のリスクが下がれば、自動車保険のニーズを減らすことにも
つながりかねず、損害保険業界はジレンマを抱えている。


 東京海上日動火災保険は平成29年4月から、パイオニアと提携して、
個人の自動車保険に付随する新サービス「ドライブエージェントパーソナル」を
始める。スマホの普及に伴い安全運転をサポートするスマホ向け無料アプリが
普及する中、専用ドライブレコーダーを貸し出す月650円、年7480円の
異色の有料サービスだ。
特徴は、事故などの衝撃を検知した際、自動で提携する警備会社に通報し、
警備会社が消防やコールセンターに連絡。運転手もレコーダーを通じて通話が
できるといった特徴がある。
スマホのアプリにも画面を操作すれば、通報などの機能はあるが、
事故の衝撃でスマホを見失ったりした場合でも対処が可能となる。
「ドライブレコーダーとして専用端末を常に設定しているので、事故時に
いちいち操作するといった手間が省ける」(担当者)という。

 損害保険ジャパン日本興亜が28年10月から始めた個人向けスマホ専用アプリ
「ポータブルスマイリングロード」は、過去5年間約500万件の事故のビッグ
データを解析した機能が特徴だ。事故多発地点をアラートで知らせるだけでなく、
事故多発地点を回避しながら目的地まで、通常ルートと同程度の時間で案内する
安全ルート案内といった機能がある。
運送業者などの事業者向けにすでに展開している同様の安全運転サービス
「スマイリングロード」では事故件数が、導入前後で約2割減少するといった
効果が出ているという。
一方、欧米では、テレマティクスを活用した「テレマ保険」が普及している。
運転の仕方の違いによって保険料が変わるのが最大の特徴で、2020年までに
欧米では自動車保険の約3割がテレマ保険に切り替わるという予測もある。
日本でも、平成27年10月からアクサ損害保険が、自動車保険の契約者を対象に
走行データを測定する機器を貸し出すサービスを始めた。
スマホのアプリと連動し、利用者の安全運転度を計測して、上位者には景品を
贈呈するなどしている。

 あいおいニッセイ同和損害保険は平成27年3月に英国のテレマ保険大手
ボックス・イノベーション・グループ(BIG)を買収。
BIGのノウハウを活用した商品開発を進めている。
テレマティクスだけでなく、自動ブレーキや自動運転といった技術面でも
安全運転の取り組みが進んでいる。
損保各社で作る損害保険料算出機構は、各社の保険料の基準となる参考純率を
平成30年1月から9%引き下げると発表した。自動ブレーキ搭載車の事故率が
低いためで、これを受けて各社の保険料も引き下げられる見通しだ。

 

 自動運転車についても東京海上が29年4月から、システムの誤作動など
運転者に過失がない場合でも被害を補償することを想定した無料の特約を
提供する。

 

ただ、事故が減ると賠償に備えるニーズが落ち込む可能性もある。
少子高齢化や若者の自動車離れもあって自動車保険の市場の大幅な拡大は
見通せない。
技術の進展によって、自動車が精密機械化して、事故の回数は減っても1回の
修理にかかる車両の費用が高騰し、車両保険代はあがるといった見方もある。
自動車保険は損保各社の主力商品だけに影響は大きい。

最新の技術を活用して事故を減らし、契約者の保険料の支払いを減らすのは
望ましい姿といえる。
だが、日本では保険料の決め方が細かく制度化されており、

「リスクの細分化は収益悪化を招きかねない」(大手損保)といった懸念の声も
あがる。損保会社の取り組みが会社と契約者の双方にとってメリットのあるものに
できるかが注目される。(経済本部 永田岳彦)

■テレマティクス 通信機能を備えたカーナビゲーションなどの車載端末と
インターネットなどを接続する技術、それを利用したサービスの総称。
テレコミュニケーション(通信)とインフォマティクス(情報工学)を
組み合わせた造語。ユーザーから自動的に収集された車の位置や速度などの
膨大な情報(ビッグデータ)をもとに、渋滞情報などさまざまなサービスを
提供できる。